自然栽培歴による有機物量の違いを見る!|冨田自然栽培米
こんにちは!自然栽培米専門店ナチュラルスタイルの井田敦之です。
一般に99.5%の農地では、農薬や肥料を使用する慣行栽培がされており、それが日本の農業の常識となっています。一方、自然栽培とは、農薬も肥料も使用しない栽培方法です。
自然栽培に取り組む農家さんは、「安心安全の農産物を作る意識」と「自然環境への意識」が高い方が多いです。
自然栽培を長くすると自然環境は本当に良くなっていくのか?との疑問の答えに結び付くような現象を今回は共有させて頂きます。
自然栽培歴1年目(昨年までは慣行栽培)と6年目で田んぼにどのような違いが現れるのかをご覧頂ければと思います。記事の最後の方には、実際に現場で自然栽培米農家さんに動画で田んぼの違いをお話頂きました。
自然栽培歴1年目vs自然栽培歴6年目の田んぼの比較
今回は熊本県菊池市で自然栽培米作りをされている冨田和孝さんの田んぼを取材させて頂きました。
冨田さんは、毎年新しく自然栽培米水田を増やしていますが、隣り合う田んぼが「自然栽培歴1年目」と「自然栽培歴6年目」と非常に貴重なタイミングで取材することができました。
私も自然栽培が長くなると春草の量が増えてくる、ことは経験として分かっておりましたが、このように実際に隣り合う田んぼを直接比較することはありませんでした。
今回比較してみて、明らかに自然栽培歴6年目の田んぼの有機物が多いことが見て分かりました。
良い土の条件とは!?
自然栽培は農薬や肥料を使用しないために土の力を最大限に引き出すことが重要となります。
自然栽培における「良い土」の条件とは「温かく、柔らかく、水はけ・水持ちが良い」です。
そのような土を作るためには耕耘する、といったような物理的な方法ではなく、根本の「土作りをしている存在」に注目する必要があります。
その存在が「土壌微生物」なのです!
そして、土壌微生物の活動源となる餌が「有機物」なのです。
田畑における有機物の違いは土壌微生物の活動に直結しています。そのことが「土の状態の違い」を生み出しています。
実際に両方の田んぼを歩いてみると、自然栽培歴6年目の田んぼの土は柔らかく、明確な違いを体感できます。
有機物量の違いを生んだ理由とは?
現場を見ると自然栽培歴6年目の田んぼの有機物は非常に豊かですが、自然栽培歴1年目の田んぼの有機物量は少ないです。なぜ、このような違いが生まれるのでしょうか?
大きな要因は、前年までの農薬の使用によるものだと考えられます。
一般の農業では、効率化を図るために人間にとって不都合な病害虫や雑草を駆除するために農薬を使用します。
当然、使用した農薬は「土」にも浸透して、土壌微生物たちにも影響を与えます。
農薬により田んぼの草などの有機物が減少するだけでなく、生態系ピラミッドにおいて「分解者」の役割を担う土壌微生物の働きも小さくなるので、足りなくなった養分を補うために「肥料」を散布する、という流れになります。
このような土の状態になると農薬&肥料のスパイラルから抜けれなくなります。
しかし、農薬を止めると翌年から少しずつ有機物が増えていき土壌微生物も増えてきます。(ただし注意点として、これまで農薬を使用したことで良い働きをする生物達も駆除してきたので、2-3年ほどは病気や虫が多く蔓延する可能性があります。)
自然栽培歴による土の違い
冨田和孝さんに「自然栽培歴による土の違い」を伺っておりますが、有機物量の違いが微生物の違いを生み、土の違いを生んでいます。
動画から自然栽培歴による田んぼの雰囲気の違いも感じ取って頂ければと思います。
最後に:自然栽培歴による有機物の違いを見る!
今回は、自然栽培歴1年目と6年目が隣り合う貴重なタイミングを得ましたので、両者の有機物量の違いを見て頂くことができました。
自然栽培にすると有機物量が増え、微生物量が増え、そして土が変化してきます。
自然栽培歴が長くなるにつれて、本来の土の状態「温かく、柔らかく、水はけ水持ちの良い」状態に戻っていきます。
自然栽培はこのように自然環境回復には良いのですが、農薬や肥料を使用しないので、見た目が良くなかったり収量も減ってしまいます。
農家さんの生活を考えると絶対にしてほしい!とは言えないのですが、未来の子ども達や地球に生物の命が豊かな田畑を残すという点では自然栽培は重要な役割を担うと考えています。
私達は食べ物によって、自分の生命の糧としていますが、やはり私たちは、生命が豊かな田んぼから採れたお米を届けていきたいと思います。