自然栽培の田んぼで育った稲は、とてもたくましい!
近年では地球温暖化などの影響により、水稲栽培において病害虫の被害が広がっています。
2020年は特にウンカの飛来量が多く、それに加え高温・少雨の影響により坪枯れの被害が多発しました。
ウンカとは稲を吸汁する害虫で、毎年梅雨の時期にベトナムから中国南部を経由して日本に飛来します。2013年には西日本全体で105億円にものぼる被害をもたらしました。
熊本でも、周辺の田んぼには稲が茶色に変色していたり、倒れていたりするものが多く見受けられました。
しかし、自然栽培の田んぼでは、その被害は最小限に留まりました。
参考:農林水産省「令和3年産水稲生産におけるトビイロウンカ対策について」
参考:農林水産省「トビイロウンカの防除と対策について」
しっかりと大地に根を張る大切さ
一般に流通しているほとんどのお米は、農薬や肥料を使用して作られています。
農薬や肥料は害虫による被害を防ぎ、栄養をたくさん与えるため、大量に収穫することができます。
一方、自然栽培は、農薬や肥料を使用しません。
自然栽培ときくと有機農業を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、有機農業は化学的に合成された農薬や肥料を使わない農業であり、動物の糞尿から作られた堆肥などは使用します。
しかし、自然栽培は堆肥なども一切使用しません。自然界に存在する植物質や鉱質物が肥料の代わりです。もちろん、これらは人為的に加えるわけではなく、自然発生的に混ざるものです。
よって、自然栽培の田んぼには、たくさん微生物が生息しています。
この微生物の活動のおかげで、環境にも人体にも優しい、自然由来の養分をたっぷりと含んだ田んぼになります。
そしてそこで育つ稲は、この養分をたくさん吸収するために、地中の深くまでその根を張り巡らせます。
このサイクルが結果として稲に自立する力を持たせ、雨風に耐え抜くことができる強くて逞しい稲に成長させるのです。
参考:農林水産省「有機農業・有機農産物とは?」
参考:自然栽培全国普及会「自然栽培基準 別表1 肥料・土壌改良資材の使用の可否」
農薬や肥料は使いませんが、微生物がたくさん生息しています
2020年は例年よりも梅雨明けが遅く、稲の分けつが少なくなりました。また、8月以降も高温多湿な環境が続くなど、天候に左右された一年でした。
そして、この影響により、例年よりもウンカや紋枯病などが多発した年でもありました。
特にウンカは1,2位を争うほど発生した年となり、収穫する際にはメッシュの虫除けネット付き帽子を被らないといけないほどでした。
下の画像は、熊本県玉名市にある田んぼがトビイロウンカにより坪枯れした様子です。
(画像引用:農林水産省「トビイロウンカの防除と対策について」)
特に晩生の稲は収穫が遅くなるため、周りの田んぼからウンカがこぞって集まってしまいます。
しかし、自然栽培で育てられた稲は丈夫に育ちました。
一般の慣行栽培のそれとは対照的に、農薬も肥料も使用しない自然栽培の田んぼには、そこまでの被害が出なかったのです。
それは、多種多様な生き物たちによる豊かな生態系が築かれているからと考えられます。
テントウムシやクモ、ヤゴ、カエルといった生き物たちが益虫となり、ウンカの被害を食い止めたのでしょう。
農薬を使えばこれらの生き物を殺してしまい、余計にウンカを寄せつけてしまいます。
さらに農薬は、使い続けると害虫に抵抗力がつき、効果が薄れてくることがわかっています。
つまり、使えば使うほど害虫が発生するという、矛盾した悪循環に陥ってしまうのです。
参考:農林水産省「農薬を使い続けると、害虫や雑草への効果がなくなるというのは本当ですか。」
自分の身体に生命力を取り入れてたくましく!
自然栽培は、自然の生命力のみで作物を育てる農法です。
ウンカがたくさん飛来した年の自然栽培米は、若干乳白色のお米も混じっていましたが、炊いてみると風味があり美味しいお米に仕上がっていました。
人の体が本来欲する食べ物とは、自然の力で育った農作物なのかもしれません。
しっかりと根を張り、大自然の中で揉まれながら、逞しさを身につける。
そんな稲の育ち方を、わたしたち人間こそ手本にすべきではないでしょうか。
私たち「ナチュラルスタイル」は自然栽培の現状や考え方を広く知ってほしいと思っています。
今回の記事が参考になりましたら、ご自由にこの記事をシェアー下さい。
【参照元】自然栽培の田んぼで育った稲は、とてもたくましい!